発行2010年7月25日 文責：染野 恭満
暑中お見舞い申し上げます。当家はエアコンがないので、夏の暑さは「忍」の一字ですが、３６度ともなりますと、汗と共に溶けていってしまいそうです。黄土高原でも夏は４０度位になりますが、湿気がないので私にはそれほど気になりません。しかし、当地にお住まいの当会調査役大野氏によれば「シュッワ」と蒸発しそうな暑さだそうです。
さて、６月に寧夏回族自治区に出張した帰り道、陕西省、河南省に回りました。
この方面は昨年１０月に緑化状況などを観察しに歩きましたが、夏場の状況と比較して見るために再度訪れました。季節的なものもあるのでしょうが、前回と比較して緑が多く、色も深くなりこの方面の緑もまた増えているように感じました。
今回、西安から洛陽までは開通（西安ー河南省の省都鄭州）したばかりの新幹線に乗ってみました。車内の電光掲示板に表示された最高時速は３４８ｋｍで、西安ー洛陽間約４００ｋｍを１時間３０分で走りました。日本の新幹線より速い？
昨年来たときは、高速道路の渋滞もあって、１０時間近くかかったのでがうそのようです。
価格は２等席で１８４元（約2,600円）。ミネラルウォーター１本のサービス付です。
本数は西安ー洛陽間上下とも一日８本、西安の始発が６時２０分、洛陽の西安行き最終が夜９時頃ですので、洛陽の世界遺産龍門石窟も西安から日帰りで行けるようになりました。
あ！そうそう、前号で少なくなったとお伝えした、テレビの抗日戦争番組の数は通常の数に戻っており、銀川、洛陽、北京で見たテレビ番組４０～６０の内、６～８（重複も含む）が抗日戦争ものでした。
それと今回テレビを見ていくつか気がついた事があります、一つは「指数」です。中国のテレビはいろいろな指数を毎日報道しており、汚染指数など環境に関するものは以前からあったのですが、今回目新しいものとしては「洗車指数」とか「登山指数」などが加わりました。中国一般市民の生活の豊さが、このような指数の中にも現れてきているようで興味深いものがありました。
もう一つは「三国志」です。日本でもおなじみの内容ですが、今回の三国志は今までと出来が違うと思いました。放映は既にシリーズ最後の場面である、「諸葛亮孔明」と「司馬懿仲達」の戦いの場面に差し掛かっておりましたが、日本の三国志の見方が、ステレオタイプで底が浅いのに比べると、さすが本場、なかなかに興味深い出来になっていました。
本号のご案内
６月半ば、中国は足蹴世界杯（ワールドカップサッカー）で狂熱（日本語ですと熱狂）状態で、スポーツ番組専門のチャンネルでは朝から晩まで試合を流していました。
日本でも似たようなものだと思いますが、日本はチームが出場していましたから、それなりに理解出来ても、チームが出てもいない中国で、なぜここまで狂熱できるのか不思議です。
中国人は日本人よりサッカーが好きなのかも知れません。それでもチームが弱いのは、暴力団が介在する「假球」（八百長試合）がはびこって、優秀な選手が育たないからです。
日本の大相撲でも、暴力団と関係のある野球賭博問題で大揺れですが、こういったスポーツにその筋がうごめくのは、日中（世界中？）同じのようです。
この例からすると、現在の日中の生活文化や興味の対象は、特に都会の庶民レベルでは差はなくなってきていると私には思えます。両国の生活スタイルが欧米に近くなれば、表面的な状況を比較してもあまり意味がなくなって来るのは当然かもしれません。
以前、会報９号「黄土の農民文化と江戸文化の相似形」にも書きましたが、私には日中生活文化の差は距離ではなく、時間なのではないかと思えてなりません。そしてその時間差（江戸の中国と現代日本)が急速に縮まってきているというのが実感です。
例えば以前はトイレにドアがないとか、レストランで食べきれないほど注文してもったいないとか言われましたが、現在は大都会ではドアがあるのが普通になりましたし、レストランでも「打包」と行って、余った料理は持ち帰る様になりました。（但し大量注文文化はまだ健在です）
マナーに関しても、以前は中国人は平気でゴミを路上に捨てるとか、タンをはくとか、キチンと列に並ばないとか、腹を出して通りを歩いているとか、つり銭を投げてよこすとかいろいろ言われて、そんなことは日本人はしはしないとなったものですが、現在の中国ではマナー欠如はまだ残っているものの、少しずつ影を潜めつつあり、世界標準に近づいていると思われます。
孟子に曰く、「恒産なくして恒心なし」で中国の生活水準が向上していくと共にマナーも向上していき、逆に恒産の少なくなった日本のマナーが落ちて来ているという感じです。
さて、気質というか性格上の問題なのか、両国民の差が出るものをいくつかあげると。
気の短さでは中国人の方が短いと感じます。飛行機が着陸すると直ぐ中国人は携帯のスイッチを入れますが、日本人は停止する頃入れる人が多いのではないでしょうか？
道を尋ねた時の回答の仕方では、中国人は方向を指差して「不远」（遠くない）、「很近」（近い）というのが一般的ですが、距離にに関しては大体がいい加減です。日本人は大体〇〇百メートル位とか数字を教えてくれる人がいますが、中国人ではまず皆無ですし、地図を読める人も少ないです。
これは教育なのでしょうか？ 生活文化習慣の違い？ それとも・・？
最後に敬老の精神をあげたいと思いますが、私の行動範囲である華北地域では、日本よりも敬老精神は残っているようです。私は日本ではバスの中などで席を譲られたことはまだありませんが、中国では若者に席を譲られることが数限りなくあり、俺ってそんなに年寄りに見えるのかとがっくりするくらいです。
中国から離れて日本の話題で恐縮ですが、今月中旬の新聞に、日本でも大手のバイクメーカーが電動自転車を発売するという記事と広告が出たのでご覧になった方も多いでしょう。
以前日本でも売り出したことがあるが、売れなかったので製造を中止していたものを、最近のエコブームで再度製造販売に乗り出したそう。
しかし、性能もデザインも、現在中国で売られている商品に比べれば１世代前で、しかもかなり高額な製品を、日本の消費者がエコブームだけで受け入れるかどうか疑問です。
この製品のキャッチコピーに「新しいだけじゃない。あしたらしいかどうかが大切。」とありましたが、中国では既にお蔵入りのこのような製品に「明日らしい」ものは感じられません。
これなら中国の製品を輸入して、廉価なミニバイク程度の価格（１２～３万円程度）で売るほうがよほど日本の消費者のためになると思いますが、それが出来ないのは、制度的、構造的にそれを阻む何かがあるのでしょう。
過去の成功や現在の権益を守る方程式にこだわって、それが古びていってしまった事に気がつかない、もしくは目を背けていると、直ぐに日本は二流国へと転落していく。加工工業立国日本として、規制緩和やイノベーションがとりわけ必要な所以でしょう。