発行2010年11月20日 文責：染野 恭満
９月上旬に尖閣諸島付近で起きた衝突事件はショックでした。この問題は１９７０年代から課題になっていたのですが、国交正常化に当って、鄧小平氏は「我々には（この問題を解決する）知恵がない。未来の人々は、きっとわれわれより知恵があるだろう」と言って封印しました。
自民党政権時代は、この問題を表ざたにしないように配慮して対応してきたのですが、民主党政権はそのようなことは意に介さずに、船長逮捕に踏み切りました。
その後の経過は報道のとおりですが、日本国民は図らずも「中国の衣の下の鎧」を見ることになり、野党時代からの意識の変換が出来ていない未熟な民主党政権は、相手が「無法者の船長」でも、領土問題が絡めば国歌の問題になって、特に日中間では複雑化する、また国際間においては「力の正義は無効だ」ということを、みっともない思いと共に学習したわけです。
今後の問題は、政府間の問題よりむしろ、国民同士の感情が、再び悪化（日本では嫌中、中国では反日）していることで、このしこりは簡単には消えないと思います。
また今回の事件は、民間が積み上げてきた友好の土壌を、かなりの程度破壊したことも事実だろうと思います。日中友好とは、賽の河原の石積みのごとく、積み上げては壊れる、なんと無駄が多く、効率の悪い作業であることかとため息が出ます。
そういえば、事業仕分けで有名になった枝野氏は、日中の「戦略的互恵関係」など幻想に過ぎないと言われたそうですが、両国関係がこれだけ密接になってしまった現在、相当腹をすえなくては出来ないでしょう。見直し位は出来るでしょうが・・・。
本号のご案内
前号で、本号のレポート予定として西安短期留学を予告しておりましたが、前述のような事情で中止しましたので、日本国内でまた新たな動きがあった中国の電動自転車（日本に持ってくると原付バイク扱い）について、またまた書いてみたいと思います。
何故しつこくこの問題を追いかけるかというと、実は４０年近く前の自分自身の体験からなのです。私はその頃自転車業界で営業職をしておりましたが、中国から廉価なミニサイクルが大量に入り始めてきていました。品質は粗雑なものでしたが、ホームセンター等で大量販売され、数年で大勢は決し、現在日本を走る自転車の大半は、中国からの輸入品となってしまいました。
この体験から、４０年前自転車業界で起きた二の舞を、バイク業界が舞わないように、また、今後の日本が採るべき方策を探る意味を込めて、再度取り上げたいと思った次第です。
まず最初に、繰り返しになる部分もありますが、今まで書いて来たことを整理しますと、中国の電動自転車は「自転車」なので、免許も登録も税金も保険も不要です。スタート時点で日本は既に制度的に足をすくわれます。性能的な面を見ますと、中国のものは時速３０ｋｍは軽く出ますし、一回充電すれば３０～４０ｋｍは楽に走ります。形は日本のミニバイクそっくりで、観光で中国に行かれた方が見るミニバイクのほとんどは電動自転車と考えて間違いありません。
価格も安いものは２千元（約２６０００円）以下で買えます。１９９７年に１万台だった年間販売数量は、２００７年には２,１００万台、１０年間で実に２,１００倍の伸びです。ガソリンより電気の方が安いので、都市部の庶民はこれを出勤や買い物や仕事に使って走り回ります。都市部の２輪車の世界では、中国は一足先に電気の時代に入っていると考えられます。
日本では車が庶民の足であり、まだまだ日本が上という考え方もあるでしょうが、いつの間にか未来を先取りして新技術で走り去り、日本は旧態依然の中にいるのに気がつかない構図は、電動自転車だけではなく、社会全体の状況になって来る虞があるのではないでしょうか。
次に日本での新たな動きについてですが、前回の瓦版で、ヤマハの電動バイク（２５万円）発売について、これなら中国の電動自転車を輸入して、ミニバイク程度のの価格（１２～３万程度）で売るほうがよほど日本の消費者に受け入れられると思うと書きましたが、９月に東京ビッグサイトで開催された国際見本市に、東京マルイが中国の電動自転車を輸入し出品していました。ヤマハとほぼ同じ性能で価格は９万９千円です。
同じような性能（もしかしたら中国製の方が良い）でかれだけ価格に差があると、中国が嫌な日本人もいざ買うとなればどちらを選ぶでしょうか？
ヤマハは、中国の電動自転車市場には参入しないそうです。価格競争での不毛な戦いをしたくないからだそうですが、中国市場で太刀打ち出来なければ、経済に国境がなくなっている今、中国の方から雪崩を打ってこちらに押し寄せてくると考えるべきでしょう。それとも何らかの理由があって、国内の商売は大丈夫と自信があるのでしょうか？
私は決して中国の電動自転車を買えとＰＲしている訳ではありません、日本企業の機器間の無さを心配しているのです。最も最近聞いた話では、ホンダも近々電動バイクの発売を開始する予定で、そしてこちらは中国市場にも参入するとのことでした。ホンダが発売する電動バイクを期待することとしましょう。日本の街の中をガソリンバイクに変わって、電気自転車が走っているのを見るのも近いことでしょう。中国市場で起きたことは、日本市場でも起きる可能性が高いのです。
会報９号（(2007年４月)で中国人の旅行熱と、そのマーケットの急速な伸びについてご報告しましたが、最近ようやく日本の入国ビザが中国人の購買力を当て込んで緩和され、本格的に中国本からも観光客がやってくるようになりました。私の友人の何人かも来日し、東京まで会いに行った事があります。
所で、中国短期留学を中止せざるを得なくなったので、替わりに私は１０月に岩手県遠野市、今月は伊豆の伊東にと国内旅行しましたが、その両方で中国人を見かけました。
遠野市で会ったのは、台湾からの観光団でしたが、その中のご夫婦にお話を伺うと、既に日本には数回来ていて、今年は２回目で紅葉見物だそうです。
伊東の方は観光客でなくて、ホテルで働いている人達でしたが、中国からの観光客接遇のために、そのホテルでは７人が働いているそうで、海を見に来る中国人観光客が多いとの話でした。
この度の尖閣諸島での衝突事件以後、中国人の団体客のキャンセルの報道がありましたが、私が時々宿泊予約で利用する中国のネット会社では、逆に日本旅行の特集を組んでいました。
当局からの日本旅行自粛要請話も流れましたが、儲かると見れば関係ないという感じです。
会報９号でご紹介した当時、日本旅行のお値段は、一週間で６千元（当時のレートで１０万円位）が主流でしたが、現在は旅行内容も様々なれパートリーが用意されてきています。価格はこのネット会社の北京発４日間の旅行では、東京買物３千元（４万円）、京都紅葉、箱根温泉各４千元（５万円）、北海道５千元（６.５万円）といった所で、かなりお安くなって来ているようです。
茨城空港にも上海便が運行されているので、私の住んでいる水戸周辺でも、中国人観光客の姿をまもなく見かけるようになるのでしょうか？
＊お知らせ＊
現在の情況下では次回訪中の予定が立たず、中国の街角を見て回ることが難しくなっております。
誠に申し訳ありませんが、暫時お休みとさせて頂きたいと存じます。